復刻ヘルメットを成型する工場に来た

375/6075 Yellow Castleの騎士のヘルメット復刻のきっかけを作ってくださった金型製造会社を経営する社長のご厚意で、工場見学をさせていただくことになりました。

工場内の撮影許可ももらったので、工場でどのように金型ができて成型まで進むのかをレポートしていきたいと思います。

訪れたのは、株式会社匠エンジニアリングの島根県にある金型製造工場です。
この他にも、本社東京新宿を含め埼玉県に3つの工場を保有する会社です。

この会社では、自動車部品、携帯端末、ペットボトルのキャップや、弱電機器の筐体など、大きさも品種も多種多様な金型を製造しています。
さらに、テストピースを作ったり、金型の出来を確認することも含め、精密ゴム部品の成型や樹脂部品の成型なども行っています。

工場内には、複数の機械がずらりと並び、どの機械が何をするものなのかはじめは検討も付きませんでしたが、社長が工場内を案内してくださった際にそれぞれの機械の特徴や金型の奥深さを教えてくださいました。

驚愕の工作精度と高速掘削ができるマシニングセンタ

まずは、マシニングセンタ。
マシニングセンタは、金属の塊をドリルビットで削り出していく機械です。
写真に写っているYASDA製 YBM640Vの他に、YBM950Vも設置されていました。型式の950などの数値は、横軸方向900mm、縦軸方向500mmの移動が可能だという事を表現していて、非常に大きな金型を高速で掘削していける機械という事です。
レゴのような小さな物を削り出すにはいささか大きい気もしますが、量産するための金型を製造する時や、大きな部品を成型するための金型は、このような機械で削り出していくそうです。

複数のコマと呼ばれる型を組み合わせ成型

実際に、これらの機械を使って削りだされた金型とコマと呼ばれる実際樹脂が流し込まれる内側の型を見せていただきました。

ヘルメットを上下で挟み込み、下側から頭の中の空間を作るためのコマがあり、合計３つのコマで成り立っているのが分かります。
完全に円筒形のレゴの頭の部品であれば、上下二つのコマがあれば出来上がるんでしょう。

金型の合わせ目（パーティングライン）のギャップを比較

今回、このヘルメットを成型するにあたり、現物を計測していただき1/1000mmという工作精度で金型を作っていただきました。
しかし、この状態でも微妙にヘルメットの中央にパーティングラインが見えるというか、爪で引っかかる程度のギャップがあったため、後日このコマをさらに調整していただき、上下のコマがぴったりと合わさるようにガイドピンを立てていただくことになりました。
これで、当時のレゴのヘルメットと同等、もしくはそれ以上の精度で合わせ目が気になることはない程度にできたようです。

写真右グレーのヘルメットは、1978年製 375 黄色いお城当時のヘルメット。
左ベージュのヘルメットが、今回試作で成型していただいた復刻版の物。
両方ともヘルメットの中央に金型の合わせ目（パーティングライン）が見えます。試作で成型した物は、まだガイドピンを立てていただく前に成型したヘルメットの状態です。
この時点で、ほぼ当時と同等の成型精度まで来ています。

成型の精度を高めようとするごとに、実際にはより多くの手間と金型の設計方法を考える必要があり、コストが上がっていきます。
コストとのバランスを考えながら作る必要がありますが、株式会社匠エンジニアリングさんは、携帯電話の筐体や、精密部品成型などで培った技術力があるため、正確に樹脂のひけや反り、収縮率を見込んで作り上げています。

要求精度が高い仕事ばかりを請け負っている事がうなずける会社さんです。
社名に「匠」と名乗るだけあって、職人気質で堅いかな？と思ってしまいがちですが、仕事の話になると詳しく金型へのこだわりを聞かせてくださり、誇りを持っているのが接しているだけで伝わってきます。

工場見学の続きは、また次回の記事でお届けしていきたいと思います。

金型工場見学 レゴの復刻ヘルメットが成型されるまで(2)